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記事の中に動画も公開しています。トラウマに関わる支援者はもちろん、トラウマを抱えた方にも参考になる内容になっています。ぜひ一度、訪問してみてくださいね。
(トラウマ)危険に直面すると人はどうなってしまうのでしょうか? 人は何とかその危険を回避しようしたり、もがいて闘ったりします。
心拍数は上がり、瞳孔が大きくなり、怒りが出てきます。アドレナリンが出て、「闘う」か「逃げる」を瞬時に判断します。
その2つが無理だと本能的に判断すると、「フリーズ」(凍りつく)します。心拍数は一気に下がり、無力感になり、鎮痛剤であるオピオイドが分泌されます。頭がボーっとして、体は固まり現実味もなくなります。
そして多くの人は固まったまま、「闘う」「逃げる」ことが出来ずに溜まったエネルギーを放出する習慣がありません。
例えば、厳しくて理不尽な大人の言うことを体を硬直させて我慢するしかなかった人は、その時のエネルギーが放出されずに体に溜まっているということです。
トラウマや虐待というのは、戦うか逃げるかの覚醒状態とシャットダウンするフリーズの反応の繰り返しなのです。
言い換えると、その部分にフォーカスしてトラウマセラピーをすることで、トラウマからくる生きづらさを解消できるとも言えます。
動物という視点からみていきましょう。例えば、草食動物はチーターなどに日々襲われていますよね。そうであれば、PTSDやトラウマ症状が出てもおかしくないはずです。でもなぜPTSDにならないのでしょうか?
草食動物は、チーターに追いかけられ、恐怖で逃げまわります。捕まえられそうになり、なんとか逃げ切れると、その後「ふるえて」その時の恐怖感などを体からリリースさせているからなのです。そして何事も無かったようにリラックスして草などを食べ始めます。
要するに、トラウマの時に溜まった余計なエネルギーがフラッシュバックとして出てくる。そのエネルギーを解放するのがトラウマセラピーの目的とも言えるでしょう。
Stephen Porges博士が提唱した「ポリヴェーガル理論」というのがあります。2000年頃から海外のトラウマ関係の講演やワークショップに行くと、この理論が重視されてきていました。
過去の被害体験を話したり、感情を解放するばかりをずっと重視されてきていました。でも、それが効果がないことがわかり、体の感覚や神経系に焦点をあてる必要があるとなってきたのです。神経系というと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいうと覚醒レベルをモニターすることです。
例えば、闘うか逃げるかの戦闘モードである過覚醒状態になっているのであれば、それをつかまえて、ちゃんと感じて、寄り添う。最終的に、覚醒しない状態にサポートしていく。
逆に、低覚醒状態である離人症や解離、シャットダウンしてるのであれば、そこから少しずつ抜け出るようなサポートをします。そうすると、穏やかな状態にいることが日常になってきます。
ポリヴェーガル理論は、人間には3つの神経システムがあると論じています。(1)過覚醒状態(2)落ち着いた状態(3)低覚醒の状態。
トラウマから回復するプロセスは、感情も大事に向き合いますが、この覚醒レベルに注目することが回復の近道になります。
過覚醒状態というのは、トラウマの症状でいうと、パニック、恐怖感、強い不安、ドキドキ、強迫行動というようなことです。過覚醒の状態になるから、そのような症状がでするのです。
だから、トラウマセラピーでは、症状を取り除くとか治すということにフォーカスするというよりは、まずは覚醒状態を穏やかにしていくことをしていくと、自然にパニックや恐怖感がおさまってくるのです。
低覚醒のシャットダウン状態も同じ原理です。低覚醒の状態は、うつ、離人症、解離、現実感のなさ、モチベーションの喪失、そのようなことと関係しているのです。
だから、トラウマを解放するセラピーでは、まず低覚醒状態からゆっくり抜け出るサポートをしていきます。そうしていくと、さっきお伝えした、うつや離人症が少しずつ改善されていきます。
トラウマセラピーに置いて、このポリヴェーガル理論は革命を起こしたと海外では言われています。それくらいトラウマや虐待のカウンセリングの臨床に役に立っているのです。
動物がトラウマを解放しているように、カウンセリングでも身体に意識を向けて少しずつトラウマを解放していくお手伝いをします。まずは「身体感覚」に意識を向けることから始めます。
例えば、胸が温かいなどの心地よい体の感覚。嫌なことを思い出したときの頭がぐるぐるする感覚。私たちは普段細かい個々の身体感覚に注目することは少ないかもしれません。
嬉しい感情や体験として感じることはあっても、「胸が温かくて光に包み込まれている感覚」と意識することは少ないでしょう。
ただ、トラウマが重たければ重いほど、そのような体の内的な感覚を感じれない人も多いです。そのような場合も体の末端から少しずつ体に慣れていくように、それぞれの状態にあった対応をします。
トラウマセラピーでは、体の末端からというのは、手をグーパーしてみたりなどの感じることをゆっくりやっていくということです。
足の裏を感じるグラウンディングをすることも比較的安全です。大地に体を委ねて、足の裏の感覚に意識を向けてみる。足踏みをして、床を感じてみるなどもいいですよね。
要するに、体の内側の安心感を感じることが安全だと思ってセラピーですぐにやると、ぶり返しや症状が悪化することがあるのです。内側の体の感覚を感じないようにトラウマや虐待をサバイバルすることもよくあることなのです。
その感じないようにしてきたことを、感じましょうと促しすぎると、心と体がびっくりしてしまうのです。体の部分が抵抗するのです。だから、症状が悪化したり、数日間寝込んだ、なんてことよくあります。
このような体レベルで準備することをリソースと言ったりします。心と体が心地よいことを育てていくのがまず大事になってきます。内側の安心感もそうです。グラウンディングやセンタリング、オリエンティング、体の姿勢や体のつか方、そのようなソマティック(体)なリソースを育てていくことがトラウマセラピーおいてまず大事になります。
トラウマからの回復の後半によくやっていくことがあります。それは、「過去の被害やトラウマに遭って出来なかった行動を完了する」ということです。
体ができなかった闘う、逃げるをセラピーという枠内で「やり直す」ということです。
闘争の反応が体に出てきた時に、それをセラピストと一緒に解放させるのです。逃げたい反応が出てきた時も同じようにやってきます。
当時は、加害者対して戦ったり、逃げたり出来なかったわけです。出来なくて当然なのです。だって相手が大きかったり、強かったわけですから。
その時にやれなかった、加害者にやり返すこと、加害者やその状況から逃げることをイメージでやったり、体の動きとして出てくるので、それを解放させるということです。
相談を進めていく中、もちろん感情のレベルでのプロセスもおこないます。怒り、悲しみ、恥、罪悪感などの感情と向き合い、解放します。 そして、認知レベルのプロセスもおこないます。回復の意味について考え、新しい気づきを見出し、過去の出来事の整理など。
大事なことは、身体のレベルのトラウマを解放すると、感情や認知の解放のプロセスがやりやすくなるということです。
言葉だけのカウンセリングを長年受けた方と相談することがよくあるのですが、みなさん口を揃えて、
「聞いてもらってよかった。頭で過去のトラウマの整理ができた。でもトラウマからの症状(解離、フラッシュバック、人が怖いなど)はほとんど変わっていない」と言われます。
時に被害の話をしすぎて「再トラウマ化」することで症状がさらに悪くなったというクライアントさんがオフィスPomuに来られます。
要するに、頭では色々分かったけど、身体レベルでは変わっていない。この基底部である身体感覚に注目したセラピーがようやく日本にも北米などから輸入されてきています。
身体に注目すると性被害などのトラウマからの回復が断然早いです。ある程度の状態にある人から「何十年も悩まされていたフラッシュバックが10分の1になった」「自傷行為、依存、強迫、強い不安が落ち着いてきた」などの感想を相談者から頂きます。
体の感覚がない、体の感覚が薄いという状態であったり、離人感などが強い場合は、あえて、ゆっくり進めていく必要があります。
ある程度、身体感覚が戻ってくるようになると、様々な症状や悩みを改善してくことは比較的スムーズです。
より詳しくは、冒頭でお伝えしたサイトを参考にして頂ければと思います。このページでお伝えした、様々なことをよく詳しく、動画もついて解説しています。
例えば、グラウンディング、オリエンティング、センタリング、呼吸の活用法、ポリヴェーガル理論、ぶり返さないカウンセリグ、トラウマセラピーの7つの代表的な動き、見捨てられ不安、完璧主義、うつ、恐怖感、フラッシュバックを減らす方法、リソースの活用法、などなど100記事ほどあります。
それぞれのトピックにつき何千字という記事でしっかりお伝えしています。支援者にも、トラウマサバイバーにもお役に立てると思います。
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