性的虐待順応症候群

 

「性的虐待順応症候群」とは、性的虐待にこどもが順応していく傾向。なぜ加害者の所に自分から戻ることがあるのか?なぜ性的虐待はたいした事なかったと合理化するのか?なぜ自分のせいだと責めるのか?などが理解できるかもしれません。

 

 

サミットによる論文「性的虐待順応症候群」Summit, Roland C (1983) The Child Sexual Abuse Accommodation Syndromeの概念です。この論文の5つのポイント。

 

 

1.     Secrecy 秘密

こどもは(性的虐待)SAの事実を秘密にしようとする。性的虐待は隠れて行われるため、秘密になる。加害者によってこどものリアリティーが作られてしまう。「このことを誰かに言ったって誰も信じない!」と加害者が言うと、それがこどものリアリティーとなってしまう。他にも、「もし言ったら母が大変な目にあうぞ」などと脅される。

 

 

2.  Helplessness 無力感

 こどもは無力で状況を変えられないと思っている。子どもは信頼できるはずの大人に裏切られているため助けがない状態にあること。ある意味、SAが成立するにはこどもが無力感にあるということが条件となってくる。被虐待児には自由、選択がない。助けを求められなくて当然なのである。SAのことを周りの家族にも相談しないし、できない。

 

 

 

3.  Entrapment and Accommodation 捕らわれと順応

こどもは加害者を含め周囲の大人の期待、要請に過度に順応しようとする。SAは何度も繰り返し起こる。逃げるよりも我慢して生き残ることを選ぶ。子どもは家庭の崩壊を恐れ、現状を維持し被害を自ら支えてしまう。普通で健康的なこどもだからこそSAという現実に順応していくのである。そして、こどもは人に話さない、嘘をつき、曖昧な発言しかしないのである。

 

 

4.  Delayed, Conflicted, and Unconvincing Disclosure  時間のかかる不確かな開示

こどもはSAを認めたがらず、説得力のない遅くタイミングのずれた矛盾した証言を行う。多くの性的虐待はまず発見されない。表面化した性的虐待は、ごくごく一部。被虐待児が大きくなり10代の後半になると怒りの感情で秘密を打ち明けることもある。しかし、こどもはすでに非行をし、大人に信頼されないような反抗的な態度なのである。「この子は悪いことばっかりして人を騙す」などとこどもに対して思っている。

 

 

5.  Retraction 撤回

こどもはいったんSAを認めた後で証言を撤回する。いったん怒りでSAのことを話しても、その怒りの根底には罪の意識のアンビバレンス、家族を守る責任などで押し潰されそうになっている。こどもは証言を撤回し、SAについて、作り話だと言ってしまう。次第に、親は話を聞かなくなり、子供は話をしなくなり、援助者は虐待をなかったことにしてしまう。

 

 

まず大人、臨床家、援助者はこの性的虐待順応症候群のプロセスをしっかり理解してほしいと思う。そうしないと、こどもは救えません。そしてサバイバーの援助も出来ないと思います。サバイバーの方々、この順応症候群を読まれて分かるように、あなたのせいではないのです!相談できなかったとしても当然なのです。否認もしたくなります。あいまいにもなります。無力感にもなります。

 

 

子供の頃のあなたは健康だったからこそ、事実を隠した。嘘をついて周りを守った。そんなあなたの中のつらかった部分を抱きしめてみませんか?